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【観劇】昭和はすでに郷愁なんだなあ「ホテル・サウダーデ」:2012年4月23日



ここ数年欠かしていないパニックシアターのフリンジ公演第9弾に行ってきました。
1204flier_1a.gif

「ホテル・サウダーデ」は、逗子に実在したなぎさホテルを舞台にしたファンタジーです。

なぎさホテルといえば、伊集院静さんの電子書籍「なぎさホテル」が話題になりました。

同名エッセイも出ています。
なぎさホテルなぎさホテル
伊集院 静

小学館 2011-07-01
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ここで働いていた人が綴ったサイトがありました。
写真や歴史はこちらに詳しいです。
大正15年から平成元年まで存在したホテル。
つまり、昭和という年代を生き抜いたホテルということになります。

今回の芝居のテーマは、この「昭和という郷愁の時間」を生きたことをどう捉えるかでした。
チラシによれば

かつて実在したホテルを舞台に、現代が置き忘れてきた日本人のゆるやかでしなやかで
しかし強靭な心の豊かさを描いたファンタジーコメディ。



フリンジ公演は毎回、主宰・中村まり子さんの描きおろし。

まり子さんの本は、現実と虚構、生者と死者、記憶と幻想が入り混じるのですが、
今回も、冒頭から、誰がいつ、どの時代を語っているのか、不明な感じで始まります。

支配人が若い人(窪田亮・好演!)と老支配人(内田稔)がいるし
主人公の夏子(中村まり子)は「おじょうちゃん」と呼ばれているし
そこにいるのかどうかわからない登場人物は出てくるし、
芝居を見慣れない人には混乱を呼ぶ構成になっています。

でも、そうした複層構造が可能なのが舞台であり、芝居の面白さだというのがまり子さんの主張なのですね。

その複層構造の中で、今回、時間を行ったり来たりしながら、彼女が言いたかったことは何なのか。
そこを考えてみました。

そういえば、前回のフリンジ公演「サイレント・メモリー」から早くも4年が経っています。

関連エントリ:「サイレント・メモリー」見ました

内容は、アルツハイマー症でぼけてしまった、元脳科学者の祖母を、
アメリカで生まれ育った孫が訪ねてくることで、引き起こされるひと夏のファンタジー。



この4年間で、中村まり子さんを取り巻く状況も、日本を取り巻く状況も大きく変わりました。
その中で、演劇には何ができるかを考えたのが昨年のアルターエゴへの描きおろしだったとすると、
震災から1年たち、この作品は、中村まり子さんの演劇人としての覚悟を示した作品でした。

関連エントリ:喪失から立ち上がる「ヒトの力」を信じよう:【観劇】「ミス・ユウ~不在~」

この「ミス・ユウ」を書いた頃の中村まり子さんは、喪失からなんとか立ち上がろうとしていました。
それから半年以上たち、彼女は、思い出を美しく心に秘めながらも、次の一歩を踏み出すために、思い出を忘れるのではなく、自分の中で消化し、昇華して、自分の一部とした上で、「逃げない」ことを選択しました。

それが、ラストシーンで主人公・夏子(中村まり子)が、若かりし頃思いを寄せたバッケさん(田村連)に、彼女が知らなかった彼女を取り巻くすべての事実を聞いた上で言うセリフ「私は逃げない。ここは私の育った場所だから」に現れています。

そう、彼女は、日本で芝居を続けることを選んだのです。

でも、そのためには、自分の心の原点に立ち返ったり、豊かな時間に抱かれていたことを実感したり、つまり「昭和」という時代の良かった出来事を思い出し、郷愁に浸り、自分の美しい思い出を整理する必要があることを、同時に示しました。
「昭和」という郷愁の時代に、彼女と同世代の人たちが出会っただろう記憶、そして、体験。
劇中には、ベトナム戦争から逃げたい米兵の存在と全共闘のゲバ棒青年がホテルに殴りこんでくるシーンがあります。激動と高ぶり、それは、まさに戦後日本の青年期であり、団塊世代の青年期でした。
そのちょっと下の世代である中村まり子さんから見れば、お兄さんたちの眩しい輝きと挫折を見ていた時代。
彼女の演劇生活のスタートが作家・三島由紀夫の演出を受けたことだったことを思えば、そうしたお兄さんたちの光芒に目を凝らしただろうことが想像できます。

そして彼女が逗子で過ごした幸せな時間を象徴する「なぎさホテル」の存在。

主人公が大学進学を理由に、居心地の良いホテルぐらし(子どもがホテル暮らししているという設定が、安楽の象徴なのですが)に決別し、社会に出て、ホテルに戻ってくること無く戦い続けたと語るのは、まさに、70年代に日本が青年期を掛けて発展し、その頂点でバブル経済となって弾け、1989年に平成になることで、何かを取り戻したいと感じた、時代の流れとリンクしています。

昭和を郷愁と感じる世代が引退期に入り、団塊の世代が定年後の生き方を選びあぐねている中で、もう一度「逃げない」覚悟が求められているのではないか。
この震災後を生きるには、自分の育った場所から逃げずに、若者だけではなく、昭和を郷愁とする世代が新たな頑張りを見せることなのではないか。それは、あの昭和という時代を知っているからできることなのかもしれない。

穿ち過ぎかもしれませんが、そんな同世代への激励と決意を、今回の芝居から感じました。

おまけ。

今回の演出でユニークだったのは、客入れ時間にホテルロビーのお客様をもてなすように「トーストとコーヒー」がサービスされたこと。
劇中の支配人と副支配人(長浜満里子・名演!)を中心にもてなしが供されました。
しかも、上演前は写真取り放題!
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(左・糸山支配人役の窪田亮さん、右・山下副支配人役の長浜満里子さん)

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photo0422.jpg

Twitterに上げるもよし、Facebookに上げるもよし、というので、上げておきました。
(私のアカウントは、Twitter=fujita244、Facebook=fujita244)

それと、上演前に携帯電話の電源をきるように促すわけですが、これが寸劇になっていてよかったですね。
お願いだけではなく、寸劇にすることでお客さんに気が付かせて、自分から電源を切るように仕向けるという講堂になっているのがとても良いなと思いました。
そういう点がとても心が行き届いているのが気持ちいいですね。

いろんなことを考えた芝居でした。
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プロフィール

fujita244

Author:fujita244
2000年から新宿在住。
21世紀とともに新宿を闊歩。
高度成長期の一億総中流育ち
頭も身体もサイズM。
フツーのオッサンから見て
フツーじゃなさそうな話を
書いています。

2011年12月に
「若だんなの新宿通信」から
「フジタツヨシの新宿通信」
に変更しました。

2012年12月20日にはてなブログも始めました。
「fujita244's field」です。
2013年2月1日からゴルフ専用のブログもはじめてます。
「fujita244のゴルフBK」です。
2つのサブブログもよろしくお願いします。

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