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書き手の覚悟を感じる:【本】百年レストラン

私は、こう見えて(どう見えるかは別として)愛妻家なので、
妻と決めた結婚記念日は二人で食事をすることにしている。

今年は六本木の豚組で豚しゃぶだった。
(@hitoshiさんいつもありがとうございます)

ここ数年は妻の仕事が忙しいこともあって新宿界隈で済ませることも多いのだが、
以前は西麻布や恵比寿でイタリアンやフレンチの店に行っていた。
そして、その際には、20年来の友人であり、愛飲愛食家である伊藤章良さんに
その時の彼がすすめる店を紹介してもらい、行っていた。

彼が紹介してくれる店は、私たちが訪ねたときには有名店ではなくても素晴らしく、
数年のうちには名店と呼ばれるようになったり、
もう一度いこうと思っても予約が取れなくなったりする店ばかりで、
しかも何年経っても、その店で過ごした時間を幸福な記憶として思い出させてくれる店ばかりなのだ。

その伊藤章良さんがついに本を出した。
東京百年レストラン ‐大人が幸せになれる店‐東京百年レストラン ‐大人が幸せになれる店‐
伊藤章良

梧桐書院 2010-12-07
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本の紹介は、私なぞがおすすめするよりも
この方の文章を読んでいただくのがいいと思う。

真にレストランを楽しみたい方へ。「東京百年レストラン」伊藤章良著@さなめも
>伊藤さんはボクと「伊藤章良とさとなおのうまい店対談」を一緒にやっている仲間である。その経験値と健啖とレストラン愛は十二分に知っている。なので以前から「本を出したら」とは勧めていた。彼が本を出したらスゴイ本ができるとわかっていた。でも、出来上がりは予想を超えていた。素晴らしい。失礼ながら、まさかこれほどとは思わなかった。

一読し、ほんとうに素晴らしいと感じた。
何よりも、この本は「レストラン」という場所がどういうものであって欲しいか
その見解を伊藤さんが「覚悟」を持って書いていることが感じられる。

伊藤さんはもちろん無類の愛飲愛食家なのだけど、
レストランガイドを書いている人の中でも本当に尊敬に値すると私が思うのは、
その店の料理や酒だけではなく、その店で過ごす体験を紹介してくれるからなのだ。

彼の本職であるイベントプロデューサーとしての仕事を(残念ながら)垣間見たことはないが、
誰かにレストランを紹介するときの実に細やかな気の配り方、そして、
依頼者の諸条件とともに、その人がその場でどう過ごすかまでも想像し、
自らの手持ち札の中から、おすすめの一枚を取り出す手つきを見ていれば、
仕事でも「これは素晴らしい時間と空間を用意してくれるに違いない」と思わされるだろう。

おもてなしの心を理解し、そこに心を砕く彼だからこそ、
お店の良し悪しの基準に「店での過ごし方」が重くなっていったのではないだろうか。

そして、彼は「自腹」でその店に行き、たぶん彼が思う通りを話し、
その言葉に呼応する店の人達の言葉を拾ってきて、私たちに紹介してくれる。

そこにあるのは、普通の客と店の会話だ。
取材費を誰かが持つから出る言葉でも、
店がレストランガイドでの評価を狙ったわけでもない会話。
当たり前でありながらも、今はそれが希少なものになりつつあるように思う。

伊藤さんの「覚悟」が最も現れていたのは、ミシュラン東京の馬鹿騒ぎへの否定だった。
多くのレストラン評論家やらレストランガイドやらがミシュランバンザイだったときに、
疑問を呈したのは伊藤さんだった。

覚悟とは、「言い切ること」に現れる。
そうあるべきと思うことは、そうあるべきと質し、
残念と思うことは、残念といい、違うとおもうことには違うという。
彼は「覚悟」を持ってレストランガイドを書いていると感じた。
その覚悟とは、自分が感じたことだけを真剣に書く、
そしてポジショントークに左右されないという、
「書き手」にとって、アタリマエのことなのだが、
今、玄人からも素人からも忘れられている(ように思える)ことなのだ。

魔人buuが食べログを「ますますだめになる」と断じたように、
自腹で書いているはずの街の健啖家の店評論さえも、
金勘定に取り込まれてしまいつつあるなか、自由なものとは言えない。
ましてや、そこにある評論はとても信用に足るようなレベルのものではない。

そうした時代に、雑誌連載であろうと、ネットコンテンツであろうと、
自腹評論家の覚悟を持って、レストランとそしてレストランジャーナリズムと向き合ってきた
伊藤さんが選んだのが「単行本」であり、味ではなくレストランそのもののガイドであることは、
今後、ネットバンザイ的なコンテンツ賛辞にすら一石を投じるようにも思う。

うれしさのあまり穿ち過ぎなことばかり書いてしまったけど、
この本に流れているのは「飲食店への愛情」であり、
巷間あふれるブログに記録することを優先する
店への感謝と食べることそのものを忘れてしまった人たちへの
痛烈なアンチテーゼなのである(本人はそうは言わないと思うけど)

私と伊藤さんの共通の友人の奥さんが、
この本を読んで「数ページ読んだだけで日本酒を飲みたくなった」と
ツイッターでつぶやいていたけど、それが素直な感想だろう。

この本には、驚くほど料理のことが出てこない。料理の写真は皆無である。
それでも、この本を読んでいると、カウンターで日本酒を傾けたくなる。
または、壁際の席で料理の皿に没頭して、その味に我を忘れたくなる。

それは多分、伊藤さんがその店で過ごした感覚が行間から立ち上ってくるからだろう。
伊藤さんと一緒に、その店に浸ってしまうからだろう。

料理ではなく、店に浸りたくなる本というのは、これまでにあっただろうか?
居心地の良い居酒屋の紹介ではあったかもしれないけど、
これは、鮨店やフレンチレストランなど、百年後も訪ねたい店を感じられる本なのだ。

店と対峙して評価するのではなく、店と馴染んで愛してしまう。
伊藤さんという愛飲愛食家の本領発揮と言える本だと思った。
店を愛する幸福な時間を共有できるのであれば、
本としては1600円というやや高い値段も十分に元が取れるというものだろう。

それは、やや高くても良い店での食事体験が十分人生を幸福にするという理由で、
安価な居酒屋に数回行くよりもまっとうなフレンチレストランを薦める伊藤さんにふさわしい体験かもしれない。


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プロフィール

fujita244

Author:fujita244
2000年から新宿在住。
21世紀とともに新宿を闊歩。
高度成長期の一億総中流育ち
頭も身体もサイズM。
フツーのオッサンから見て
フツーじゃなさそうな話を
書いています。

2011年12月に
「若だんなの新宿通信」から
「フジタツヨシの新宿通信」
に変更しました。

2012年12月20日にはてなブログも始めました。
「fujita244's field」です。
2013年2月1日からゴルフ専用のブログもはじめてます。
「fujita244のゴルフBK」です。
2つのサブブログもよろしくお願いします。

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