原子力安全・保安院がまたもやってくれました。
【断層ずれても運転可能に】抜け道づくりの批判も 原発で新基準導入へ@47ニュース原発直下に地盤をずらす「断層」があっても原発の運転を一律に禁止せず、継続の可能性を残す新たな安全評価基準の導入を、経済産業省原子力安全・保安院が検討していることが28日、分かった。
すでにこの話題には、多くの2ちゃんスレなり、ブログ記事があるかと思いますが、私見を述べてみます。
そもそも原子力安全・保安院とは何かを考えると、彼らは「原発」だけが守備範囲ではないことがわかります。
原子力安全・保安院とは?原子力安全・保安院は、右に掲げる各分野のエネルギー施設や
産業活動の安全確保を使命とする国の機関です。
たゆまず「安全」という永遠のテーマに
取り組んでいきます。
この右に掲げるテーマというのが高圧ガス、都市ガス、液化石油ガス、火薬類、電力、鉱山、原子力。
つまり、爆発しそうなモノと場所に関する安全を考える組織で、
英語名がNucrear and Industrial Safty Agencyであることからも、産業技術の安全が見て取れます。
こうした広い分野を統合するには、専門家ではいられません。
専門的なことは外部有識者に任せて、経産省としての判断を下す部署が必要なんです。
つまり、法律に基づいて諸施設の安全について検討する審議会を設け、そこで出た専門家の意見を取りまとめて、経産省の都合に合わせて結論を出すのが仕事。
そういった意味で、彼らに専門性を求めてはいけないわけです。多分。
そして彼らはガスタンクの下や鉱山に断層があろうと破砕帯があろうと許可してしまうだろうと思われます。
そのほうが経産省的に都合が良いから。敷いては、企業に都合が良いから。
住民の身体の安全などという曖昧なものではなく、企業活動が「安全」に回ることが目的なのだろうと思われます。
今回の「断層」の問題も、すでに「専門家の意見」は出ていました。
保安院 泊破砕帯「問題なし」 断層活動認められず@どうしんウェブ経済産業省原子力安全・保安院は24日、北海道電力泊原発(後志管内泊村)の敷地内を走る破砕帯と呼ばれる軟弱な断層について、「活断層ではなく、耐震設計上考慮する必要はない」と判断した。
伊方・志賀原発、活断層連動の影響なし…保安院@ヨミウリ・オンライン原子力発電所の周辺活断層が連動した場合に原子炉などに与える影響を検討する経済産業省原子力安全・保安院の専門家による意見聴取会は28日、四国電力伊方原発(愛媛県)と北陸電力志賀原発(石川県)について「連動の揺れに影響を受けない」とする電力会社の検討結果を了承した。
すでに「専門家」や「電力会社」が「大丈夫」と言っているのだから、原子力安全・保安院は「大丈夫」と認めて、先にすすめるわけです。
誤解しがちなところは、原子力安全・保安院が独自の決定を示すわけではないということです。
あくまで、専門家の意見を集約し、電力会社の調査結果を重んじることで、結果を導くだけです。
決定は、原子力安全委員会が下すべきなのです。原子力安全・保安院にとっては。
でも、こうした構造は「ダブルチェック」とは言いませんよね、普通。
そうなんです。ダブルチェックにした途端、その間でポテンヒットが生まれまくるのが日本の組織。
「検討」をダブルでしても、結論を出さないならば、ダブルチェックに意味はありません。
お互いに、相手のせいにしているうちに、有耶無耶になるのが日本のダブルチェックの素敵なところです。
そして、普通はレームダックであるはずの、もうすぐ無くなる組織に判断をさせたらば、こうした責任感のない、投げやりな結果が出ても仕方がないのに、まだ原子力安全・保安院に判断を委ねるのが間違っっているとしか言いようがないですね。
彼らの守っている「安全」は、彼らの組織の「安全」であり、電力会社の「安全」だったわけですが、その守るべき安全の対象がない今、「安全」に対する感覚が狂ってしまっているのでしょう。
原子力規制委員会が、まず手を付けるべきなのは、こうした原子力安全・保安院が作った「安全基準」がほんとうに「安全」なのかどうかで、こうした「前例」を下敷きにしてことが進んでは、大変なことになりかねないと思います。
彼らの守っている「安全」について、イチから見つめなおさない限り、同様のことは起き続けるでしょう。
私は、原子炉の耐用年数に関する議論あたりから、原子力安全・保安院は危ない組織だと思っていました。
原子力発電所の耐用年数はどれくらいですか。
原子力発電所は運転開始後には、電気事業法 等に基づき13ヶ月~24ヶ月に1回、定期検査を行います。この定期検査を通して設備の機能や健全性を確認した上で、次の定期検査までの期間運転が認められることになります。また、原子炉等規制法に基づき、 運転開始後10年ごとに最新の知見等の保安活動への反映状況などの確認を定期安全レビューとして実施されます。 さらに平成21年1月の制度改正に伴い、運転開始後30年を経過する原子力発電所は、運転年数が長期間経過していることから、 30年を経過する前に設備の経年劣化に関する技術的な評価を実施し、同評価結果に基づく長期保守管理方針を策定して、10年ごとに再評価を行うことが法令上義務付けられています。
したがって、機器の健全性や保安活動の適切性を確認しながら運転を続けることが我が国の安全規制制度となっています。
また、我が国の原子力発電所には、法律上定められた寿命はなく、 原子炉 の設置許可にあたっても、許可の年限は設けていないので、原子力発電所の運転をいつ停止するか等の判断は、安全性、経済性などを総合的に判断して事業者が自ら決めるものです。
(
原子力安全・保安院のFAQより)
原子力安全・保安院が求めるような法律上の寿命がないというのだから、呆れます。
原発を継続するにしても、ここから手を付けないといけないとすれば、ほんとうに大変なイバラの道が残されているのだなと思います。
それにしても、こうした耐用年数のことも含めて、原発と原子炉について、私たちは何も知らないのだなと改めて思いました。